FC2ブログ
お茶でも飲みながら「けいおん!」
けいおん!系SSの中から、お茶でも飲みながらマッタリと読みたいほのぼのしたものを中心に、管理人の好みで載せていきます。
201811<<12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>201901
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
和「桜高軽音部専属ボーカル 真鍋和です」

和1 

1 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:10:33.57 ID:VqJUrEcl0
唯 「・・・・・・・」ムー

和 「唯、なにを難しい顔をして考え込んでるの?」

唯 「あ、和ちゃん・・・ あの、ね。実は部活動どうしようかと思って・・・」

和 「え、まだ決めてなかったの?学校が始まってもう二週間もたってるよ!」

唯 「でもでも・・・・私、運動音痴だし。文科系のクラブも良く分からないし・・・・それに・・・」

唯 「私なんかが入ったら、きっと迷惑になっちゃうんじゃないかなって・・・それで・・・」

和 「・・・・唯」

3 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:12:54.83 ID:VqJUrEcl0
和 「約束したよね。高校に入ったら”変わる”んだって。少なくても、その努力はするんだって」

和 「そのきっかけ作りのために、まずは部活動をやってみるって誓ったんだよね?」

唯 「うん・・・・」

和 「じゃ、ほら。よく分からないんだったら、部員募集の掲示板とか、あと部活見学とかにも行ってみようよ。私も付き合うし」

唯 「ありがとう、和ちゃん・・・」

和 「唯、このままじゃニート街道まっしぐらだからね。唯の保護者を自認する私としては、放っておけないのよ」

和 「なんてね」

唯 「・・・・・・・部活やってないだけで、ニート・・・・」しょぼん・・・

和 「あ、と、とにかく!放課後になったら、いろいろ見に行きましょ?」

唯 「うん」


4 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:14:01.14 ID:VqJUrEcl0
昼休み!職員室!!



和 「失礼します。あの、先生」

担任 「おお、真鍋か。どうした?」

和 「あの、部活のことでちょっと相談が・・・」

担任 「ん?真鍋は生徒会に立候補するから、部活動はやらないと言っていなかったか?」

和 「あ、私のことではないんです。じつは友達の平沢唯のことで」

担任 「ああ、いるかいないのか分からない、あの平沢か?」

かっちーん

和 「・・・・そうです。その平沢です。で、ご相談の内容なんですg
担任 「なんだなんだ、真鍋は平沢と親しいのか?」

和 「・・・・はい、幼馴染ですが。それが?」



5 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:18:47.93 ID:VqJUrEcl0
担任 「ふむ。君みたいな優秀な生徒が、あのような子と親しくするのは、あまり感心せんなぁ」

和 「・・・それは、どういう意味ですか?」

担任 「なんら自己主張ができず存在感はない。出席をとっても蚊の鳴くような声でしか返事ができない。成績も中の下」

担任 「君がつき合って、メリットを見出せるような人物でもなかろう。友達はもっと選ばなくてはなぁ」

担任 「まぁ良い。で、相談ってのはなんなんだ?」

和 「いえ、もう結構です。失礼します」

たったった ぴしゃん

担任 「・・・・なんだ、あいつは」

さわ子 「・・・・・・」


6 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:20:01.49 ID:VqJUrEcl0
和 「なによなによ、あのヒヒオヤジ。よくも言うに事欠いて、唯の事をああも悪く言えたものね!」

和 「・・・・本当の唯のことなんか、露ほども知らないくせに。頭にくる」

和 「・・・・・くやしい(ぐす)」

さわ子 「待って、真鍋さん!」

和 「え、あのえっと・・・?」

さわ子 「追いついた・・・ えっと、真鍋さんね。私は吹奏楽部の顧問をやっている、山中さわ子です。よろしくね」

和 「山中・・・先生?」

さわ子 「・・・・泣いてたの?」

和 「これは・・・ べ、別に」

さわ子 「泣きたくもなるわよね、友達のことをああも悪く言われたら。真鍋さんはよく耐えたわ」

さわ子 「私が言われたんだったら、あのクソジジイ!ふん縛ばってフルボッコにした後、下水に塗れた汚い川に放流してやるところ


7 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:23:44.07 ID:VqJUrEcl0
和 (ぽかーーん)

さわ子 「だいたいあいつぁー・・・ はっ!?」

さわ子 「い・・・今の聞いてた?」

和 「はい・・・」

さわ子 「あ、今の無し!私、そこまで言ってない!あの、今のはオフレコでお願い。ね?」

和 「・・・・・ぷっ」

和 「くす。はい、わかりました。それで先生、私に何か?」

さわ子 「あ、そうそう。真鍋さん、お友達の部活動のことで先生に相談したいことがあるんでしょう?」

さわ子 「力になれるかどうか分からないけれど、私でよければ相談に乗るわよ?」

和 「え、本当ですか?あ、ありがとうございます!」

さわ子 「いいのよ、ここでは何だから音楽準備室でお話しましょう」

和 「はい!」


8 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:24:32.36 ID:VqJUrEcl0
音楽準備室!!


さわ子 「少人数で、アットホームな雰囲気の部?」

和 「はい、そういう部があったら、ぜひ紹介して下さい」

さわ子 「それは・・・うーん、そうねぇ。和気藹々としている部はいくつか知っているけど・・・・・」

さわ子 「ね、それは必ず少人数でないといけないものなの?」

和 「はい」

さわ子 「どうして?」

和 「それは・・・ その、言わないといけないでしょうか」

さわ子 「そうね、事情を知っているのと知らないとでは、有用な情報を提供する精度に開きが出る、てところかな」

和 「・・・・・・」

さわ子 「当然だけれど、絶対に口外はしません。私を信用して、話してくれないかしら」




9 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:25:41.74 ID:VqJUrEcl0
和 (宛にならない担任の代わりに、何の関わりもない私の相談に乗ってくれるような人だ・・・)

和 (良い人・・・ この人なら信頼にたるかもしれない)

和 「先生は、平沢唯をご存知ですか?」

さわ子 「ごめんなさい。職員室でも聞いていたけど、私はその平沢さんっていう生徒を知らないの」

和 「当然ですよね。なにせ彼女のあだ名は”空気”ですから」

さわ子 「空気・・・?え、それって本当にあだ名なの?」

和 「悪口半分、特徴半分ってところでしょうか。いるのかいないのか分からない。いても見えない。存在を感じられない」

和 「で、ついたあだ名が空気・・・・」

さわ子 「それって・・・・」

和 「ひどいでしょう?でも、本人が空気に徹しようとしているんだから、どうしようもないんです」

さわ子 「徹するって・・・ じゃあ、本来の平沢さんはそういう子じゃなかったってことなの?」

和 「はい。以前の唯はとぼけたところもあったけど、明るくて、前向きで、元気で・・・いつも笑顔で」

和 「ただ、そこにいるだけで、いつの間にかみんなの輪の中心になっているような。みんなもつられて自然と笑顔になってしまうような」

和 「・・・・そんな唯の親友でいられることが、私の何よりの自慢だったんです」

さわ子 「・・・・・・・」

和 「あの子が変わってしまったのは中学2年の頃・・・ 」



10 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:28:07.68 ID:VqJUrEcl0
和 「最初は些細なことだったんです。今となっては原因もはっきりとは思い出せない」


あの頃の唯は人よりノンビリというか、マイペースなところがあって。

いわゆる天然っていうものでしょうか。でも、けっして嫌味なところがあるわけでもなく。

私には唯のそんな天然ぶりが快かったくらいです。おそらくクラスのみんなの大半もそう思っていたと思います。

でも、そうではない人たちもいた。いわゆるクラスの不良たち。

最初は取るに足らない悪戯から始まりました。でも、次第にそれがエスカレートし・・・・

唯は唯で、元来のノンビリさであまり深刻にも考えず、いつも通りに日々を送り・・・

それが不良たちの癇に障ったんでしょう。ついには陰湿ないじめに発展してしまいました。



11 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:31:12.16 ID:VqJUrEcl0
相手はたちが悪い不良です。嫌がらせ程度の時とは違って、本格的に目を付けられてしまった以上、唯に近づく人は誰もいなくなりました。

みんな、次の標的が自分に移るのを恐れたんです。

唯にとっては、まったく訳が分からなかったでしょう。ある日を境にクラスの中でただ一人、孤立してしまったんですから。

そして、唯は覚えたんです。誰も味方がいない。助けが期待できない。自分で打開もできない。ならばどうするか、その方法を。

唯は心を閉ざし、自分の内面に殻をかぶせ、その中に篭ってしまいました。

楽しい事があっても笑わない。辛いことがあっても泣かない。体はそこにあっても、自分はいないものと。

やがて何をしても反応のない唯から興味をなくしたのか、不良のいじめは頻度を減らし・・・

3年になりクラスが離れたことで、唯に「空気」というあだ名を最後に残し、いじめは完全に無くなりました。

でも・・・・ 唯は元には戻らなかった。


12 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:32:41.25 ID:VqJUrEcl0
さわ子 「ハードな話ね・・・」

和 「高校に入る前、唯と話し合ったんです。このままで良いのかって。このまま自分の殻に閉じこもって、更に3年間を過ごすのかって」

和 「あの子もそれは嫌だって。また以前のように笑って過ごしたい。でも、もう自分ではどうすれば良いか分からないって言うんです」

和 「だから、気のあった仲間たちと、何か夢中になれることに打ち込めたら、心を開くきっかけになるんじゃないかって」

さわ子 「そこで、部活なわけね」

和 「はい。でも、いきなり大所帯に放り込んでも、今の唯じゃ絶対に萎縮してしまう。それじゃ逆効果です」

さわ子 「だから少人数でアットホームな・・・か。うん、心当たりがないでもないけど」

和 「本当ですか!?」

さわ子 「ただね・・・ ちょっと引っかかることがあるのだけど」

和 「え、なんですか?」


13 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:35:03.88 ID:VqJUrEcl0
さわ子 「あなたはどうするの?」

和 「私・・・ですか?」

さわ子 「そう、あなた。平沢さんを未知の世界に放り込んで、あなたはどうするの?」

和 「わ、私は・・・」

さわ子 「私ね、さっきの話しを聞いていて釈然としないところがあったんだけど」

和 「・・・・・っ」

さわ子 「まぁ、過去の話だし。私に言われて表情を硬くしたってことは、私の言わんとしている事も分かってるようだから・・・」

さわ子 「だからそのことは良いわ。ただし、現在進行形のこの件だけは投げっ放しにしちゃダメよ」

和 「・・・・はい、分かっています」

和 「私も唯と同じところに入ります。ですから、その部を紹介して下さい!」

さわ子 (にっこり)「分かったわ。じゃあ話を付けておくわね。明日の放課後、平沢さんを連れてここにいらっしゃい」

和 「ここって、音楽室へですか?」

さわ子 「そう、廃部寸前の軽音部へ、ね!」


14 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:37:26.11 ID:VqJUrEcl0
翌日!!


唯 「けいおんぶ?」

和 「そう、軽音部。軽音楽部ね。唯、そこ行ってみない?」

唯 「そこ、何をするところなの?」

和 「うーん。軽い音楽って書くんだから、きっと簡単なことしかやらないわよ」

和 「・・・・口笛とか」

唯 「・・・・ほんとに?」

和 「う・・・ と、とにかく見に行ってみない?ほら、唯。たしか楽器を演奏するの、好きじゃなかった?」

唯 「え、そうだっけ?そんな事いったかな・・・・」

和 「幼稚園のとき、カスタネットを叩いて先生に褒められたって・・・」

和 「嬉しそうに教えてくれたじゃない」

唯 「・・・・そんな昔のこと」


15 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします sage 2011/02/03(木) 21:38:16.56 ID:43DXNlmio
いいね、いいね
頑張って


16 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:38:55.72 ID:VqJUrEcl0
和 「良いじゃない。褒められて嬉しかったってことは、音楽は嫌いじゃないんでしょ?」

唯 「うん・・・・」

和 「だったら行ってみましょ?それとも他に、気になる部でもあるの?」

唯 「そういうわけじゃないんだけど・・・・でも・・・」

和 「じゃ私につき合ってくれないかな?軽音部ね、私も気になってるの」

唯 「え・・・和ちゃん、部活やるの?生徒会やりたいって言ってたのに・・・・」

和 「う、うん・・・ まぁ」

和 「・・・・・・・来年。生徒会は来年。今年は目いっぱい部活を楽しみたい気分なのよ」

和 「ね、唯。一人じゃ心細いの。一緒に来てくれないかしら」

唯 「そぉ・・・ 和ちゃん、生徒会に入らないんだ・・・」

唯 「・・・・わかった、和ちゃんがそう言うなら」

和 「ありがとう、唯」


17 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:41:37.40 ID:VqJUrEcl0
>>15

読んでくれてる人がいると嬉しい。
ありがとね、がんばる。


音楽室前!!


和 (さて、山中先生が話を通してくれてるはずだけど・・・・)

和 (さすがにちょっと緊張するわね)

唯 「・・・・・和ちゃん?」

和 「こほん。ん、んー。そ、それじゃ唯、ノックするわよ」

唯 どきどきどきどき

和 (・・・・返事もできないくらい硬くなっちゃってる。唯・・・我ながら強引だったかしら)

和 (でも、一歩を踏み出すのは唯自身も望んだこと。大丈夫、唯には私がついている。もう二度と・・・・)

和 (もう二度と過ちは繰り返すものか!)

? 「なにしてるのー?」

唯・和 「わぁっ!?」


18 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:43:29.35 ID:VqJUrEcl0
? 「部室の前で何してるの?」

和 「び、び、びっくりした・・・・ あ、あの、軽音部の人ですか?私たち・・・・」

? 「あ、もしかして真鍋さんに平沢さん?」

和 「あ、はい」

? 「入部希望の!」

和 「は、はい!」

? 「わはぁー!!いらっしゃい、待ってたよ!ギターがすっごく上手いんだってね!」

唯・和 「・・・・・・え?」

? 「来てくれるのまってたよー!ひゃっほー!!」

和 (ど、どういうこと!?私、楽器ができるなんて一言も・・・・)




19 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:45:50.12 ID:VqJUrEcl0
? 「みんなー!入部希望者が来たぞー!!」

がちゃっ!

? 「本当か?! ようこそ軽音部へ!」

? 「まぁ! 歓迎いたしますわ~!」

? 「よぉしムギ!お茶の準備だ!」

? 「はい~♪」

彼女たちが煎れてくれたお茶を頂きながら、私たちは簡単な自己紹介を済ませた。

一つ判明したこと。それは私たちが楽器を演奏できる。それもかなりのベテラン。

山中先生は私たちを紹介するさい、そんな根も葉もない設定をおまけに付けて話していたらしいということ。

なんでそんな事いったんですか、山中先生ーーーー!




20 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:46:18.34 ID:VqJUrEcl0
律 「実は私たちも今年の新入生なんだけど・・・・」

澪 「先輩たちがみんな卒業しちゃって、部員は私たち三人だけなんだ」

紬 「一週間以内に部員が4人以上にならないと、廃部になるところだったんです」

和 (う・・・重い。なるほど、両者の利害の一致ってわけか。ただ紹介してくれたわけではなかったのね・・・・)

唯 「あうう・・・・・」

和 (ああ・・・唯が入部を断れない雰囲気に押し潰されそうになっている。どういうこと?っていう目でこっち見てる)

和 (でも、みんな良い人そうだし・・・ それにこの人数。唯のリハビリにはうってつけだわ)

和 (これは、却って好都合だったかも知れないわね)

律 「それで、ふたりはどんな音楽がやりたいの?」

和 「え・・・?」

律 「どんなバンドが好きかぁー?」

唯 「あ・・・ぅ」

律 「好きなギタリストは?」

和 「えっと・・・(早く言わなきゃ。じつはギターなんて引けないって)」

澪 「ん? じゃ、平沢さんは? どんな音楽が好き?」

唯 「え・・・と・・・・あの・・・・」

澪 「?」

唯 「・・・・・・・・・」

律 「んー??」



21 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:48:33.63 ID:VqJUrEcl0
和 「あ、あのっ!な、なんだか手違いがあったようで・・・・ 実は私たち、ギターなんて弾けないんです」

紬 「まぁまぁ、そうだったんですか? きのう山中先生がとんでもない逸材をスカウトしてきたって言うから、私たちてっきり・・・・」

和 「あはあは(何を言ってるんですかー、せんせい!!)」

紬 「じゃあ、なにならできるの?」

和 「それが、まったくの素人で。ここで一から始めてみようかと。ご迷惑でしたか・・・」

澪 「いや、そんなことはないよ。弾けなければこれから弾けるようになれば良いだけだし。なぁ、律」

律 「平沢さんもできる楽器ってないの?」

唯 「・・・・・・・・」

和 「あ、この子もしr
律 「平沢さんに聞いてるんだけど」

唯 「・・・・ぅ」


22 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:51:16.83 ID:VqJUrEcl0
澪 「おい律、どうしたんだ? そんな強引な聞き方するなよ」

律 「平沢さんさー。ここ来てまだ一言も話してないんだけど。どうしちゃったのかなーって思って、さ」

紬 「そういえば。大丈夫?具合でも悪いのかしら」

唯 (ふるふる・・・・)

澪 「震えてるぞ。風邪か?」

紬 「大変! たしか風邪薬の持ち合わせがあったはずだわ! 待ってね、今・・・」

和 「あ、違う! 違うんです。この子、緊張しちゃってて。それで少し静かになっているだけなんです」

律 「ふーん・・・ そうなんだ」

律 「まぁいいや。二人とも入部ってことでいいんだよね? じゃ、これ。入部届け。書いて明日持ってきてね」

和 「はい。じゃ、今日はこれで。行こう、唯」

唯 (こくっ)

和 「あ、お茶。ご馳走様でした」

ばたん


23 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:53:56.95 ID:VqJUrEcl0
澪 「・・・・おい律。途中からなんか、態度悪かったぞ。良くないぞ、ああいうの」

律 「お前、今の平沢っての見て、何も思わなかったのか?」

澪 「なんのことだよ」

紬 「どうかしたの、りっちゃん」

律 「別に・・・・ たださ。ああいうモジモジしたの見てると、無性にイライラするんだよ」

律 「言いたいことがありゃ言えばいいし、無けりゃ堂々と座ってりゃ良いんだ。それをオドオドウジウジ・・・」

澪 「やめろよ律。誰しもお前みたいに単純じゃないんだ。それにお前に辛く当たられて、二人に入部を取り消されたりしてみろ」

紬 「そうよ。二人のおかげで廃部も免れそうなんだし。ね、ここは我慢して・・・」

律 「あー、もう、はいはい。分かってる。わぁーってるよ」

紬 「ま、まあともかく!これで練習開始前に廃部っていう、最悪の事態は避けられそうね」

澪 「そうだな! いよいよ軽音部の本格始動だ。がんばろうな、律! ・・・・律?」

律 「・・・・・・・」


24 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 21:56:08.86 ID:VqJUrEcl0
和 「見学のつもりが、入部することになっちゃったわね・・・」

唯 「・・・・・・・」

和 「どう、やっていけそうかしら。 ・・・・唯?」

唯 「・・・・・あのカチューシャの人・・・ 怖い・・・」

和 「あー・・・ ちょっと自己主張が強そうな子だったわね。唯の苦手なタイプか」

和 「でも、そんなに悪い人には見えなかったし、もし何かあっても・・・」

和 「・・・・・今度は私が唯を守るから」

唯 「・・・・のどか・・・ちゃん?」

和 「だから。ね、唯」

唯 「うん・・・ありがとう。私、がんばってみるよ」

和 「一緒にね、がんばろう」

和 「それじゃ、また明日ね」

唯 「・・・うん。また明日」

和 「・・・・・・」

和 「・・・さて、携帯を」(ぴぽぱ)

和 「あ、もしもし。待たせたわね、いま帰るところ。ええ、分かったわ。じゃ、駅前の喫茶店でね」(ぴっ)

和 「あの子にも報告、しておかなきゃね」


25 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:00:28.83 ID:VqJUrEcl0
喫茶店内!!


和 「えっと、窓際の席・・・ あ、いたいた。お待たせ、だいぶ待った?」

憂 「あ、和ちゃん。ううん、さっきついたところ」

和 「そう、良かったわ。あ、コーヒー下さい」

憂 「和ちゃん。お姉ちゃんの部活の件だけど・・・・」

和 「軽音部に決めてきたわ」

憂 「え、もう決まっちゃったの?」

和 「届けを出して、明日から練習に参加するつもりだけど」

憂 「・・・・・・・」

和 「どうしたの?」


26 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:03:06.57 ID:VqJUrEcl0
憂 「私、やっぱりお姉ちゃんが部活をするの、反対です」

和 「その話はこの前もしたでしょう? これは前に一歩を踏み出すため、唯自身が望んだことなのよ」

憂 「それでも。お姉ちゃんが自分で決めたからって、その答えが正しいとは限らない」

和 「憂・・・」

憂 「怖いの。もしまた酷い事をされたら、今度こそお姉ちゃん、立ち直れなくなっちゃう。それがとても怖い」

憂 「今は静かにそっとしておいて欲しい。そうすればいつかはお姉ちゃんも」

和 「そのいつかって、いつ?」

憂 「え・・・」

和 「唯が苛めにあったのがもう二年前。この二年で唯が元に戻ることは無かった」

和 「じゃあ、この先の二年も元に戻る保障なんて無いじゃない。二年後って言ったら三年生。進路を決めなきゃならない大事なときに・・・」

和 「その時になって唯が今のままだったら、あの子は本当に終わりよ。そうならないために、させないために・・・・」

和 「多少荒療治でも、今からできることをしておかなきゃ」




27 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:04:40.35 ID:VqJUrEcl0
和 「だいじょうぶよ。何かあっても、私が唯を必ず守るから」

憂 「・・・・・あの時も、和ちゃんがそれだけ親身になってくれてたら、お姉ちゃん壊れなかったかもしれないのにね」

和 「憂・・・ そうね。本当にその通りよ。でも、過去にはもう戻れないもの」

和 「だから私は、今できることを全力でやるわ」

憂 「勝手だよ」

和 「そうね、勝手だわ」

憂 「私ね。和ちゃんのこと、まだ許せてないんだ」

和 「・・・・当然よね。でも。許さなくて良いから、少しだけ私を信用して? お願い」

憂 「・・・・・うん」

和 「ありがとう」

和 「ところで、憂の夢。そっちのほうはどうなっているのかしら?」

憂 「うん・・・こつこつやってるよ」

和 「機会があったら、私にも見せてね?」

憂 「そのうちに・・・ね」

和 「楽しみだわ」

憂 「・・・・・」

和 「・・・・空が高いわね。明日も晴れるのかしら」

憂 「うん、晴れたら良いよね」



28 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:06:04.28 ID:VqJUrEcl0

・・・
・・・・
・・・・・

男子 「やーい、がり勉!勉強ばっかしてて、そんなに先生に褒められたいのかよー!」

和 「ちが・・・やめて・・・やめてよ・・・」

男子 「がーりがりべん!がりがりべんべーん!」

男子 「あひゃーひゃっひゃっひゃ!」

和 「う・・・ぐす・・・ ふぇ・・・」

唯 「こらーっ!」

男子 「うわ、平沢だ!」

唯 「和ちゃんをいじめるなー!」

男子 「うっせーな、からかってただけだよ。ちぇ。もう行こうぜ」

唯 「まったくもー! だいじょぶ?和ちゃん」

和 「あ、ありがとう、唯ちゃん・・・・」

唯 「えへへ。和ちゃんは唯が守ってあげるからね!」ぎゅっ

和 「きゃっ、唯ちゃん!?」

唯 「へへ。ぎゅってされると落ち着くでしょ?泣き止むまで、ずっとこうしていてあげるね!」

和 「ありがとう・・・///」

・・・・・
・・・・
・・・


和 「・・・・・ん」

和 「朝・・・? 夢か・・・昔の・・・・」

和 「・・・・・・・唯」

和 「・・・今日から部活か。がんばろうね、唯」


29 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:08:02.76 ID:VqJUrEcl0
放課後! 音楽室!!

がちゃっ

和 「こんにちわ」

唯 「・・・・こ、こんにちわ」

律 「おー、来たなー、新入り! 改めて今日からよろしくな!」

和 「こちらこそよろしく、田井中さん」

律 「ちっちっ、今日からは同じ軽音部の仲間なんだしさ、堅苦しいのは無しにしようぜ。私のことは律でいいよ」

澪 「私は澪で」

紬 「私はみんなからムギって呼ばれてます。お二人にもそのように呼んでもらえたら嬉しいです」

和 「ありがとう。私のことは和って呼んでね」

律 「平沢さんは、どう呼んでもらいたいー?」

唯 「え・・・あの・・・・ うぅ」

律 「・・・・・はぁ」


30 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします sage 2011/02/03(木) 22:09:53.85 ID:v8iHFsMto
俺は憂スキーだけどちょっと気になるな
憂はいじめられてた時なにやってたんだろな
和を責められる程度にはがんばっていたのかね?同じ中学なハズだし


31 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:10:21.91 ID:VqJUrEcl0
澪 「ま、まぁまぁ。呼び名なんて馴染んできたら自然に決まるさ。なぁ、ムギ!」

紬 「そうね。その為にもまずは親睦を深めないと。というわけで、お茶にしましょう!」

和 「え、あの・・・練習は?」

澪 「練習といっても、まだ平沢さんと和のパート分けが決まっていないだろ?どっちにしてもすぐに練習と言う訳にはいかないよ」

和 「そうか・・・ 言われてみれば当然よね」

律 「で、いま我々に不足しているのがギターだ。てわけでぇ、二人のどっちかはギターって事でお願いね」

和 「残ったほうは?」

澪 「それなんだけど、ギターが加われば一通りバンドの形は整うんだ。もちろんギターが二本になっても、それは構わないんだけど」

紬 「ただ、楽器は二人とも初心者でしょ? それだったらギターは一人に集中して練習してもらって、もう一人には専属のボーカルを頼もうかと思ってたの」

和 「ぼ、ぼーかる!!?」

唯 「!!!!」



32 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:12:26.72 ID:VqJUrEcl0
和 (こ、これは予想外の展開だわ。てっきり楽器だけをやればいいものかと思っていたけど・・・・)

和 (でも、そうよね。バンドだもん。歌を唄う人が当然必要になるわよね。だけど、人前で歌を唄うなんて、そんな恥ずかしいこと・・・)

唯 がくがくぶるぶる・・・・

和 (唯・・・・ )

律 「平沢さん、やってみない? ボーカル。いちばん目立つし、かっこいいぜ!それにきっと気持ちいーよ?」

唯 ぶんぶん!!!

律 「そんな豪快に首ふって、それほど嫌かぁ」

唯 こくこく!!!

律 「嫌なら嫌でいいけどさぁ、意思表示は言葉でしようぜ。口、ついてるんだからさ」

唯 「うう・・・・」

和 「はいっ!!」 しゅたっ!

和 「はいっはいっ!!ボーカル、私がやります!」しゅたっしゅたっ!

唯 「・・・・のどかちゃん」

和 「ボーカル、前からやってみたかったの! ああ、超やりたいなー!!」

律 「超って・・・」

澪 「決まりだな! じゃあ、平沢さんがギターね。それで良い?」

唯 こくり・・・

和 (いくらなんでも今の唯にボーカルはやらせられない! くぅ、唯のため。がんばるのよ、私!)


こうして私たちの役割が定まり、いよいよ軽音部員としての新たな日々の幕が切って落とされたのだった。



33 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:14:28.41 ID:VqJUrEcl0
澪 「じゃあ、早いうちにギターを買わないとだね」

和 「ギターってどれ位するのかしら。値段・・」

澪 「うーん・・・ 安いのは一万円台からあるけど、あんまり安すぎるのもよくないからな。5万円くらいが良いかも」

唯 (五万・・・!私のお小遣い10カ月分・・・・・)

澪 「高いのは10万円以上するのもあるよ」

和 「部費で落ちないのかしら」

律 「落ちません♪」

澪 「とにかく、楽器がないとなにも始まらないからな」

律 「よーし!今度の休みにギター見に行こうぜ!ね、平沢さん」

唯 「う・・・・うん」(お金だいじょぶかなぁ・・・)


34 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:16:13.27 ID:VqJUrEcl0
その日の夜。平沢家の唯の部屋!!


憂 「お姉ちゃん、ご飯だよ・・・ あれ、貯金箱なんかひっくり返して何してるの?」

唯 「あ、憂・・・。あの、えっとね」

憂 「なにかお金が必要なの?」

唯 「うん。あのね、私・・・ 軽音部に入ったんだ」

憂 「・・・・そうなんだ」

唯 「うん。でね、ギターをやることになってね。それ、買うお金が必要で・・・・」

憂 「そっか。ねえ、お姉ちゃん」

唯 「なぁに?」

憂 「軽音部の人たちって、どんな人なの?」

唯 「え、どうして・・・?」

憂 「単なる好奇心だよ」

唯 「・・・・みんな良い人だよ。一人ちょっと怖い人もいるけど、悪い人じゃないっていうのはわかるから・・・・」

憂 「やっていけそう?」

唯 「がんばってみるよ」

憂 「うん、がんばって。でも、無理もしないで。辛くなったら逃げ出したって良い」

唯 「・・・憂?」

憂 (逃げないで無理して、それでよけいお姉ちゃんが壊れてしまったら、元も子もないもの)

憂 (もしそうなったら・・・今度こそ和ちゃん。私はあなたを許さない)


35 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:27:58.72 ID:VqJUrEcl0
(回想)

憂 (あなた方ですか?姉を苛めているというのは・・・・)

憂 (え?私?顔見て分からない?あなた方が苛めに苛め抜いた平沢唯の妹ですよ)

憂 (何しに来たって・・・ バカですか?これ、私の手にあるもの。見て分かりません?)

憂 (あはは。冗談って・・・ この期におよん・・・でっ!!!!)がごっ!!!

憂 (きゃははは!痛い?ねぇ、痛い??痛いよねぇ。痛くしてるんだもん。あなた方と一緒)

憂 (人が嫌がるの、痛がるのを分かっていて、私のお姉ちゃんを滅茶苦茶にしてくれたお前らと一緒だぁ!)どごっ!!

憂 (こんな事してただで済むと思ってるかって?思ってないよ。だってこれは私への罰でもあるんだも・・・んっ!!!)ごきゃっ!!

憂 (私に心配させないように、いつも通りに振舞ってくれてたお姉ちゃん。私・・・気付けなかった)

憂 (お姉ちゃんが壊れちゃうまで気付けなかった!私!私がああああああ!)ばきょむっ!!

憂 (はぁはぁ・・・・ 仕返ししたくなったら、いつでも来てください。でも・・・・)

憂 (私はお姉ちゃんのためなら何でもやれる女だって。分かってもらえましたよね?それが分かった上でくるのなら・・・)

憂 (それ相応の覚悟を持ってどうぞ)



37 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:31:59.69 ID:VqJUrEcl0
憂 「・・・・・・・・」

憂 (分かってる。本当は私に和ちゃんを責める資格なんてないんだって・・・)

憂 (私も一緒。和ちゃんとおなんなじ、お姉ちゃんがこうなる前に何もしてあげられなかった・・・・)

憂 (でも、勝手だけど和ちゃん。今回のこと・・・不安だけど、期待しちゃっていいのかな?)


憂 「・・・・お金、お小遣いの前借り、お母さんにお願いしてみたら?」

唯 「え、でも・・・」

憂 「だいじょうぶだよ。私も一緒にお願いしてあげるから」

唯 「うん、ありがとうね。憂・・・・」

唯 「いつも本当にありがとう。ごめんね、迷惑ばっかりかけて・・・・」

憂 「・・・・そんなことないよ。なに言ってるの、やだなお姉ちゃん。さ、行こう?」



38 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:33:57.75 ID:VqJUrEcl0

・・・
・・・・
・・・・・

唯 「和ちゃん。私、少し学校を休もうかなーって思うんだ」

和 「え、どうしたのよ急に」

唯 「あの人たち、私を眼の敵にして、それがここのところ特に酷くてさー」

唯 「いじめ・・・られてるみたいなんだ。・・・へへ」

唯 「少し休んで冷却期間をおいたら、あの人たちも飽きて嫌なこともされなくなるんじゃないかなぁって」

和 「・・・唯、だったらなおのこと休んじゃダメよ。ああいう卑劣なやつ等に弱みを見せたら、事態は更に悪化しかねないわよ」

唯 「そうなの?でも、正直もう辛いんだよ・・・」

和 「平気よ。なにかあっても私がいるじゃない。クラスの他のみんなも。唯は一人じゃないんだから、ね?」

唯 「う・・・うん。和ちゃんがそう言うなら、もうちょっとがんばってみようかな」

和 「偉いわ、唯。その意気よ!」

・・・・・
・・・・
・・・


がばっ

和 「・・・・・・・・」

和 「はぁ、何だってのよ。もう・・・・」

和 「と、もうこんな時間。早く支度して出かけないと。今日はギターを見に行くんだから・・・」

和 「・・・・・・・唯」



39 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:36:33.55 ID:VqJUrEcl0
楽器店

和 「すごい・・・ギターがこんなにたくさん」

唯 「はぁ~~~~・・・」

律 「平沢さん、どれがいいか決めた?」

唯 「あ、えと・・・ その、選ぶ基準とか・・・どうすればいいのかなって・・・」

澪 「ギターって音色はもちろん、重さやネックの形や太さも色々あるんだ」

唯 「・・・・・・あ」

澪 「だから女の子はネックが細いほうが・・・て、あれ、平沢さん?」

唯 「このギター・・・ 可愛い・・・」

紬 「平沢さん、そのギターが気に入ったの?」

唯 「・・・よく分からない。けど、なんか気になるの」

律 「でも、そのギター25万円もするぞ」



40 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:37:05.37 ID:VqJUrEcl0
唯 「本当だ・・・ これはさすがに手が出ないよ・・・」

律 「・・・・・」

唯 がっくり・・・

律 「平沢さんさ。これ、そんなに気に入ったの?」

唯 「え・・・・ でも、高すぎt
律 「はっきり言えって! 欲しいの欲しくないの?」

唯 「え、う・・・ほ、欲しいです・・・!」

律 「よしよし、やっと自分の気持ち、言ってくれたな」

澪 「律?」

律 「言いたいことはさ、考えるより先に口に出しておいたほうが気持ちいいぜ。そうすることによって開ける道もある」

唯 「え、どういうこと・・・・?」

律 「私に考えがあるっ!!」


41 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:38:01.11 ID:VqJUrEcl0
律 「たしか予算で5万円持ってきてるんだったよな?」

唯 「うん、お小遣い前借りして・・・」

律 「だったら不足分はあと20万。うーん、楽勝じゃね?」

紬 「あの、言っている意味がいまいち分からないんですが・・・」

律 「だからさ。5万円手付けで払って分割にしてもらってさ。残り20万はみんなでバイトしてチャチャッと稼いじまおうぜ!」

唯 「・・・・え」

律 「ここに5人もいるんだ。一人頭4万円。けっこう現実的な額じゃねーの?」

澪 「なるほどな。律、お前にしては良い事を言うじゃないか。良いアイデアだ、見直した!」

律 「だってだって部長だもん♪」

和 「簡単に言うけど、4万といったら大金よ。口で言うほど楽には稼げないと思うけど、それでも協力してくれるの?」

律 「協力って・・・ お堅い人ですなぁ和ちゃんは」


42 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:40:40.68 ID:VqJUrEcl0
律 「私たちはバンドをやるんだぜ。だったら、バンドで使うギターをみんなで買ったって、別に不自然じゃないだろ」

和 「律・・・・」

律 「それにさ、私もいま使ってるドラムがどうしても欲しくってさ。値切りに値切って、がんばって買ったんだよ」

澪 「あの時は店員さん、泣いてたぞ・・・・」

律 「だから、それくらい欲しかったんだって。やっぱりさ、自分が気に入った楽器で演奏したいじゃん。なぁ、唯?」

唯 「・・・・・!」

律 「ん、どしたー?」

唯 「う、ううん。あ、あの・・・・ あ、ありがとう・・・・」

律 「おう♪」

紬 「あの~、りっちゃん。値切るって、なんですか?」

律 「欲しいものを手に入れるために、努力と根性で負けさせることだよ!」

紬 「すごいですね!なんか憧れます!!」

澪 (憧れる要素がどこに!?)


43 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:41:55.67 ID:VqJUrEcl0
紬 「よぉし!」

ずんずんずん!

和 「え、ムギ・・・どこに?」

紬 「ちょっと待っていてね(ふんす)!」

和 「ムギ、どうしたのかしら・・・」

律 「さぁ・・・ なんか店員さんと話してるみたいだけど」

澪 「お、なんだ?店員さんが電卓をたたいて・・・ あ、ムギが戻ってきたぞ」

紬 「このギター、5万円で売ってくれるって」

唯 「ひっ!?」

唯 「・・・・ひゅー・・・ひゅー・・・へぐっ」

律 「お・・・おお・・・ 唯が驚きのあまり、呼吸困難を起こしてるぞ・・・」

和 「しっかり、唯! ゆっくり息を吸うのよ!」

唯 「ああ・・んぐぅ・・・ ぜはぜは・・・」

澪 「い、いったいなにをやったんだ!?」

紬 「このお店、実はうちの系列のお店で」

和 「そ、そうなんだ・・・・」

唯 「ぜぇぜぇ・・・ も、もうだいじょぶ・・・」



44 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:44:29.61 ID:VqJUrEcl0
律 「驚いたが・・・何はともあれ、良かったな唯!」

唯 「はぁはぁ・・・ う、うん。ありがとう・・・・琴吹さん」

唯 「足りなかった分は、きちんと返すから・・・」

紬 「どういたしましてー。気にしないでね?」

和 「ムギって、実はすごいお嬢様だったのね・・・・」

澪 「のようだな。どうりでどこか、浮世離れしてる雰囲気があるわけだよ・・・」

紬 「しゃらんらしゃらんら♪」

律 「しっかし、これでバイトは必要なくなっちゃったな。せっかくの私の大演説、無駄になった今となっちゃ恥ずかしいぜ・・・」

(くいくいっ)

律 「・・・ん、なんだ、唯」

唯 「そ、そんなこと・・・・ないよ。あの・・・ りっ・・・・」

律 「・・・・・・」

唯 「あぐ・・・・」

律 「なんだよ?」

唯 「・・・田井中さん・・・ あ、ありがとう・・・・」

律 「ああ、友達だろ。気にすんな」

唯 「ともだ・・・ち・・・」(かぁーー・・・)

和 「・・・・唯」


45 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:45:29.01 ID:VqJUrEcl0
数日後。駅前の喫茶店!!


憂 「お姉ちゃんがね。笑ってたの」

和 「へぇ」

憂 「嬉しそうにギターを抱えて帰ってきて。夜にお風呂空いたよって部屋に呼びに行ったら、鏡の前でギターを構えてポーズをとってた」

和 「唯らしい。・・・昔の、だけど」

憂 「でね、私が見てるのに気がついたら、照れてはにかんで・・・ ミュージシャンっぽい?って」

和 「可愛いわね」

憂 「うん、可愛いひと。お姉ちゃんはもともと、こういう人だったんだなって」

和 「・・・・そうね」

憂 「あれから・・・ ギターを買ったあの日からお姉ちゃん、少しずつ笑顔を見せてくれるようになったよ。だからね、和ちゃん」

憂 「今回は、和ちゃんが正しかったのかも知れないね」

和 「憂・・・・」


46 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:47:03.79 ID:VqJUrEcl0
憂 「軽音部の皆さんの事も少し話してくれたよ。学校の出来事を話すなんて、お姉ちゃんが壊れちゃって以来のことだもん」

憂 「嬉しかった・・・・」

和 「みんなのこと、唯はなんて?」

憂 「うん。ベースの秋山澪さんは背が高くて、格好良い大人の女性って感じの人。でも少し繊細だって」

和 「ふふ、そうね。サバサバしてるのに、本当は極度の恥ずかしがりやさんなのよね」

憂 「キーボードの琴吹紬さん、通称ムギちゃん。おっとりぽわぽわしていて可愛い人。そんで、かなりお嬢様っぽいって」

和 「そうなのよ。どうやらお金持ちの家の子らしいんだけど、いろいろ謎も多いのよね・・・ いつかお家にお邪魔してみたいものだわ」

憂 「それとドラムの田井中律さん・・・・」

和 「律のことはなんて?」




47 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:47:43.27 ID:VqJUrEcl0
憂 「最初は怖かったって。ううん、今でも少し怖いって言ってた。元気いっぱいの姿が、いまの自分には眩しすぎるからって」

和 「そう・・・」

憂 「でも、本当はすごく優しい人だとも言ってたよ。人のために一生懸命になれる、とても優しい人・・・・」

和 「・・・・・」

憂 「軽音部が良い人ばかりみたいで良かった。あそこでならお姉ちゃん・・・・」

憂 「自分を取り戻していけるかもね。ちょっとずつ・・・・着実に・・・・ね、和ちゃん」

和 「ええ、きっとそうなるわ。だから憂も心配しないで。あなたにはあなたの夢もあるんだから。そっちにも専念しないとね?」

憂 「うん。それで今、ちょっと考えてる事があるんだ」

和 「なになに?」

憂 「えへへ、まだ秘密。でも、形になったら和ちゃんには真っ先に見せるからね」

和 「憂・・・ ええ、楽しみにしているわね」



48 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:48:55.44 ID:VqJUrEcl0
憂の言ったとおり、それからの唯は時おり皆の前で笑顔を見せてくれるようになった。

昔の彼女からは程遠い、それはとても控えめな笑顔ではあったけれど。

また、笑顔と同じく控えめな態度と声で、皆の話の輪にも加われるようになってきていた。

軽音部でのふれあいの中で唯は少しずつ、亀の歩みのようにノロノロと。でも、着実に。

かつての自分を取り戻していっているようだった。

そして平穏な日々がゆったりと私たちの横をすり抜けて行き、気がつけばもう季節は夏。

私と唯が軽音部の仲間に加わって、はや三ヶ月が経とうとしていた。



49 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:50:07.06 ID:VqJUrEcl0
ある日の軽音部!!


がらっ

和 「こんにちわ。あれ、澪ひとり?」

澪 「やぁ和。うん、まだ誰も来ていないよ。平沢さんは?」

和 「日直なの。日誌かいて来るから、少し遅れるわ」

澪 「そっか」

和 「・・・・・・あの、澪」

澪 「なに?」

和 「練習、しないの? 私よく分からないんだけど、あの・・・セッションとかいうの?合わせて演奏するやつ」

澪 「そうだよね。いつもお茶を飲んで時間過ぎちゃって、気がついたら下校時間になってるんだよな。

澪 「・・・私もこのままではまずいと思ってるんだけど」




50 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:51:11.58 ID:VqJUrEcl0
澪 「和は家で自主練とかしてる?」

和 「一応。ボイストレーニングの本を買って声出しをしているわ」

澪 「そうか・・・ 初心者の和もがんばってるってのに。軽音部のこの体たらく。このままじゃ部全体がダメになる」

和 「澪?」

澪 「なぁ和。ちょっと相談があるんだけど」

和 「??」


そして30分後!


律 「よーし!全員そろったな!それじゃ~~、ムギ!!」

紬 「はーい、今日のおやつはモンブランよー♪」

律 「やったー!でっかい栗!でっかい栗!あ、これ私のー♪じゃあ、さっそくいただきm
澪 「ちょっと待ったー!!」

律 「な、なんだよ。嬉しいおやつ時に水をさすように大声で」

澪 「お茶の前に、みんなに言っておくことがあります!」

唯 「???」

澪 「和」

和 「うん。せーの・・・」

澪・和 「合宿をします!!!」


51 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:53:29.32 ID:VqJUrEcl0
紬 「合宿?」

和 「そう、もうすぐ夏休みだし」

律 「もしかして海? それとも山とか!?」

澪 「遊びに行くんじゃありません!!バンドの強化合宿。朝から晩までみっちり練習するの!!」

律 「着ていく服や水着、買いに行かなきゃ!」

澪 「聞けーーーーっ!」

唯 「がっしゅく・・・・」(わくっ)

和 「夏休みが終わったら、すぐに学祭があるでしょ」

律 「学園祭・・・・?」


52 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:55:16.21 ID:VqJUrEcl0
澪 「そう。桜高祭での軽音部のライブといえば、昔はけっこう有名だったんだぞ!」

澪 「それなのに。いくら慌てずやっていこうっていったって、もう三ヶ月にもなるのに一度も合わせたことが無いなんて」

和 「そろそろ本格的に練習を開始しないといけない時期だと思うわ。このままライブをやっても大恥をかくのがオチよ」

紬 「そうね。行きましょう!私、みんなでお泊りするの夢だったの!」

律 「おーし!決まりだな!唯も行けるだろー、合宿!」

唯 「・・・う、うん」

律 「よーし、よしよし!楽しみだな、唯!」

唯 「うん・・・///」

和 「・・・・・」

律 「あ、でも待てよ・・・ なぁ、澪」

澪 「なんだ?」

律 「かかる費用とかどう捻出するんだ?部費だけじゃ結構きつくね?」

澪 「あ・・・それは・・・ あ、あのムギ?」

紬 「はい?」

澪 「別荘とか・・・」

紬 「ありますよ♪」

律・澪・和 「あるんかい!!」


53 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 22:58:01.60 ID:VqJUrEcl0
和 「唯、帰ろう?帰りに合宿に持っていくいろいろな物、買って行きましょ」

唯 「・・・あ、うん」

和 「楽しみね、合宿」

唯 「・・・・・うんっ」

和 「澪はみっちり練習って言ってたけど、練習は練習でがんばって、遊びも目いっぱい楽しみましょうね」

和 「ムギの別荘は海だっていうし、夏にしかできない事をたくさんするの。きっと良い想い出になるわ」


唯の心の中に汚泥のように凝り固まり蓄積されている、忌まわしい悪しき想い出。

それを楽しい、すばらしい想い出で上書きしてやるんだ。

澪は純粋に練習目的で合宿を持ち出したんだろうけれど、私がその提案に乗った理由は別にある。

それは未だ学校との往復以外は家に篭りがちな唯を、夏の太陽の下に引っ張り出すため。

やはり人間、内に篭りっぱなしでは心の中も内に内にと萎縮してしまう。

唯は軽音部の皆とのふれあいで笑顔を取り戻しつつある。そんな皆と家や学校を離れ、外への一歩を踏み出すのだ。

きっと唯は、もっともっと笑顔を見せてくれるようになるだろう。

夏の太陽にも負けない、あのまぶしいくらいの無垢な笑顔を・・・・


和 「澪のことを利用したようでちょっと気がひけるけど・・・ 許してくれるわよね・・・」

唯 「和ちゃん、何か言った?」

和 「あ、ううん。さ、まずは何から買いに行こうか。水着?おやつ?どれからでもバッチコイよ!」

唯 「くすっ。変な和ちゃん・・・」



54 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:00:41.31 ID:VqJUrEcl0

・・・
・・・・
・・・・・

唯 「和ちゃん!和ちゃん助けて・・・・っ!」

和 「・・・・唯!」

唯 「っ! やだ、服引っ張らないで!助けてよ、和ちゃん!和ちゃん!!」

和 「ああ、わ、私・・・・ ゆ、唯・・・!」

唯 「きゃあ!やあ!やだ!和ちゃん!和ちゃん!」

和 「・・・・っ」

唯 「の ど か ちゃ - ん !!!!」

・・・・・
・・・・
・・・



和 「唯!!!!」がばっ

和 「はぁはぁ・・・・」

和 「また、あの頃の夢・・・ もうヤダ。もうヤダよ・・・・」

和 「唯・・・ なぜ私を責めないの・・・」


55 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:01:22.70 ID:VqJUrEcl0
最悪の寝覚めで重い体を鞭打ち、私は強引にベッドから跳ね起きた。

いつまでもこうしていられない。手早くパジャマを脱ぎ、ベッド脇に用意しておいた服に着替える。

顔を洗って髪を整えたら、きっと気分も切り替わるだろう。

今日は合宿の第一日目。言いだしっぺの一人である私が、待ち合わせに遅れるわけにはいかない。

行こう、唯が待ってる。



56 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:02:15.50 ID:VqJUrEcl0
平沢家!唯の部屋!!


ちゅんちゅん・・・

唯 「・・・・・」(むくっ)

憂 「お姉ちゃん、朝だよ。そろそろ起き・・・ あ、もう起きてたんだ」

唯 「うん。おはよ、憂」

憂 「おはよう、お姉ちゃん。いよいよ今日から合宿だね」

唯 「うん。 ・・・・楽しみで早く目が覚めちゃった」

憂 (お姉ちゃんがこんなに外のことに心を開くなんて。もしかしてお姉ちゃん、もう元に戻りかけて・・・?)

憂 「ね、なんでそんなに楽しみなの?」

唯 「え・・・?だって、別荘に泊まるの初めてなんだよ。海に泊りがけで行くのも初めてだし」

唯 「それに和ちゃんも皆も一緒だし、あと、りっ・・・・」

憂 「りっ?」


57 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:04:02.35 ID:VqJUrEcl0
唯 「あ、ううん。なんでもない/// ・・・でも、何でそんなことを聞くの?」

憂 「・・・・・ううん、何となくだよ。じゃあ、目いっぱい楽しんでこなきゃだね!」

唯 「くすくす・・・・ 変な憂・・・」

憂 「えへへ・・・」

憂 (軽音部に入って徐々に明るさを取り戻してきてるお姉ちゃん。本当に良いところなんだね、お姉ちゃんの高校の軽音部って)

憂 (本当は泊りがけで出かけるなんてまだまだ不安なんだけど、でもこんなに上手くいってるんだもん)

憂 (信じてるからね、和ちゃん。今度こそ本当に)

憂 「さ、朝ごはんできてるよ。早く食べないと、待ち合わせに遅れちゃうよ!」

唯 「・・・・! すぐに着替えて降りるからね・・・!」



58 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:10:00.64 ID:VqJUrEcl0
律 「青い空!」

紬 「白い雲!」

澪 「照りつける太陽!」

和 「心地よい潮風!」

唯 「着いたぁ・・・!」


到着!ムギの別荘!!


律 「でっけーっ!なんだこの別荘!自宅か!?」

紬 「本当はもっと広い所に泊まりたかったんだけど・・・いちばん小さい所しか借りられなかったの」

律 「いちばん小さい・・・・? コレで?」

和 「世の中って広いわ。まだまだ私の知らない世界が、こんなにも身近にあるものなのね」

澪 「ま、まぁ・・・圧倒されそうだが、まずは荷物を置かせてもらって、一息ついたら練習を始めるぞ!」

律 「えー、まずは遊びでしょー。せっかく海にきたんだから、泳いでぇスイカ割ってぇ砂でお城作ってぇ~」

澪 「何しに来たんだよ!言ったろ、みっちり練習するって!遊ぶなら練習の後だからな!」

和 「それに遊び疲れちゃったら、練習での集中力が続かないでしょ? 先にやることをやって、後からノンビリ遊べばいいのよ」

律 「相変わらず硬いなぁ、お二人さん。んー、唯は? 唯はどうしたい?」



59 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:16:25.43 ID:VqJUrEcl0
唯 「わ、私は・・・」(ちらっ)

和 「・・・・・・」

唯 「え・・・ぅ・・・ あ、あそ・・・・」

律 「・・・・・・」

唯 「・・・・・あぐ」

紬 「はいはいはーい! 私は遊びたいです!」

澪 「ムギまでっ!!」

律 「おーっっし、多数決!あっそびたい人、手ぇあげてー♪」

紬 「はいっ!」

澪 「む、負けるかぁ!練習に賛成な人、挙手だ!」

和 「はい!」

律 「むむっ!」

澪 「むむむっ!!」

紬 「両者同数!一進一退の膠着状態ね!息詰まる攻防戦!はぁはぁ・・・」

律 「・・・と、いうことは、だ」

和・律・澪・紬 じーーーーーー・・・・

唯 「え!? え・・・あ、あぐっ・・・ 」


60 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:20:22.67 ID:VqJUrEcl0
和 「唯はどうしたいの?」

唯 「わたし・・・は・・・」

和 「いいのよ、唯。言っていいの。自分の考えで、自分のしたいことを言ってもいいんだよ?」

唯 「わたし・・・・」


唯 「私は、遊びたい・・・」


和 「・・・・」

律 「いよっしゃー! これで決まりー。公平な多数決の結果だからな、澪も文句ないよな?」

澪 「わかったよ。でも、帰ってきたら本当に練習だからな」

律 「分かってるよ。ムギ、行こうぜ! ほら、唯も」

唯 「う・・・うん///」



61 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:22:33.76 ID:VqJUrEcl0
澪 「みんな行っちゃったな。ま、仕方がないか。あきらめて流れに従うとしますか。ね、和」

澪 「・・・和?」

和 「え、あ・・・ ゴメン、澪。ちょっと感極まっちゃって」

澪 「どうしたんだ?」

和 「唯がね。あの引っ込み思案になっていた唯が、ちゃんと自分の意思を言葉に出してくれた・・・・」

和 「それがね、私にはとても嬉しくって」

澪 「そうなのか・・・ だけど、だったら和」

和 「え?」

澪 「・・・・なんだってそんな、辛そうな顔をしてるんだ?」

和 「・・・・・!」


62 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:25:34.25 ID:VqJUrEcl0
律 「ほらほらー、唯ー! わかめお化けだぞー!」

唯 「きゃーっ」

律 「うははは!お前もわかめ人形にしてやろうか!」

唯 「やだーっ」

紬 「あらあら。平沢さんとりっちゃん、すっかり仲良しね」

律 「はぁはぁ・・・けっこう唯、逃げ足速いのな。疲れたぁ・・・ さて、次は何して遊ぶー?」

澪 「スイカ持ってきたけど・・・・ 割る?」

律 「おー!割る割る!かち割ってやる!」

紬 「割ってやるー!」

唯 「あははっ」

和 「・・・・・・」


63 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:28:44.04 ID:VqJUrEcl0
そして楽しい時間はあっという間に過ぎ、時は夕暮れ・・・


律 「いや~。遊んだ遊んだ!余は満足じゃ・・・・」

澪 「まだまだ。せっかく海に来たんだから、思う存分遊ばないと!ここまで来た意味が・・・」

澪 「て、ああーーー!練習!」

律 「・・・忘れてたのかよ」

澪 「ま、まったく・・・ 律が遊ぼうなんていうからだゾー・・・」

律 「いちばん楽しそうに遊んでたのは誰だ」

澪 「ツーン」

和 「み、澪・・・」

紬 「まぁまぁまぁまぁまぁまぁ。さぁさ、戻って練習にしましょ」

唯 「・・・六回」

澪 「ほらほら、遊びモードはここまで!気分切り替えて練習するからな!さ、早く戻るぞ!」

律 「へいへい。ま、約束だしなー。よっし、唯!戻ろうぜー!」

唯 「う、うん。和ちゃん、行こう?」

和 「ええ」

和 「・・・唯、楽しかった?」

唯 「うんっ・・・!」(にこーー)

和 「そっか。良かったね」

唯 「えへ・・・」


64 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:30:32.33 ID:VqJUrEcl0
じゃじゃっじゃじゃっじゃーーーん♪

律 「・・・・・・」

澪 「・・・・・・」

紬 「・・・・・・」

和 「・・・・・唯」

唯 「え?」

和 「唯、いつの間にこんなに上達してたの!?」

唯 「そ、そうかな? い、家に帰った後はとくに何もすることなかったし・・・」

唯 「ギターばっかりいじってたから、だからかなぁ・・・」

和 「それにしたって・・・」


65 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:32:18.22 ID:VqJUrEcl0
思えば唯には、小さい頃からこのようなことが度々あった。

いろんなことに興味を示し意識が散漫になりがちな唯は、一つの事に集中するのが非常に苦手な子だった。

しかしいったんツボにはまって「やる気」の矛先が一ところに向かった時。

今回のような急成長を成し遂げて、周りを驚かせるのだ。

つまりそれは・・・・


澪 「いや、すごいな平沢さん。正直驚いたよ」


唯が自ら前向きに音楽に取り組もうとしていることの現われであり・・・


紬 「本当ね。私たちも平沢さんに負けないように頑張らないといけないわね」


唯という無色の空気に、人の目を惹く色彩が添えられたことでもあり・・・


律 「唯、頑張ったな」

唯 「・・・・うん!///」


私の元から唯が巣立って行く日が近いことの、何よりの証だった。



66 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:35:52.43 ID:VqJUrEcl0
律 「なぁ、唯ー」

唯 「なぁに?」

律 「唯さ、コーラス。やってみね?」

唯 「え・・・・」

澪 「お、おい律・・・」

律 「前から考えてたんだよ。メインの和に唯のコーラス。幼馴染だし、息もぴったり合うだろ?」

律 「唯はギター初心者だし、そこまでやらせるのは酷かなーって思って黙ってたんだけど。けど、これだけ上達してるなら、歌いながらだって大丈夫そうじゃん?」

紬 「それはそうかもしれないけど、だけど・・・」

律 「別に無理強いさせようってわけじゃないよ。たださ。なぁ、唯。一度でかい声でわーってやっちゃえば、けっこう色々と吹っ切れちゃうもんだぞ」

和 「・・・・・!」


67 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:37:08.82 ID:VqJUrEcl0
唯 「田井中さん・・・」

律 「ライブでさ。みんなの前で大口あけてデッカイ声だして。クラスの奴等とかビックリするぞ。どんな顔するか、ちょっと見てみたくないか?」

唯 「え・・・あの・・・・でも・・・・」

澪 「おい、律!」

唯 「ご、ごめんね。少し考えておく、ね・・・ あの、ちょっとトイレに・・・」

とことこ・・・ばたん。

澪 「はぁ・・・ なぁおい、律」

澪 「今の、ちょっと強引じゃないか?平沢さん、困ってたじゃないか」

律 「はぁ? 何いってるんだ、澪。唯のやつ、歌いたそうな顔をしてただろ?」

和 「・・・・律」

澪 「そ、そんなわけ・・・」

律 「・・・はぁ。あのなぁ、澪。あとムギもだ。そろそろ言っておこうと思ってたんだけどな」

律 「お前らいつまで唯を腫れ物を触るみたいに、お客様扱いし続けるんだ?」

紬 「え、私たち、そんなつもりじゃ・・・」

律 「だいたいなんだよ、いつまで経っても平沢さん平沢さんって。いいかげん名前で呼んでやれよ」

澪 「そ、それは・・・ 平沢さんが名前で呼ばれたいのかどうか分からなかったし・・・」

律 「私と和は名前で呼んでるだろ。嫌に思うもんか。そんな変な気遣いをしてるから、いつまで経っても他人行儀な態度で接しちまうんだよ」

律 「澪ならわかってやれるだろう?相手から踏み込んできてくれなきゃ、自分から一歩を踏み出せない。そこまで心が弱くなっちゃうこともあるって」

澪 「・・・律」 

和 「・・・・・・・」


69 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:40:08.24 ID:VqJUrEcl0
紬 「お茶にしましょう」

律 「え?」

紬 「唯ちゃんにコーラスをやりたいかどうか聞かなきゃならないし。やるならどういう風に、どんな風に入れるのか話し合わなきゃならないし」

紬 「休憩も兼ねてお茶にしよ。ね?」

律 「あ、ああ・・・そうだな。と、唯のやつ、遅いな。もしかして、でっかいh
澪 「わー!下品なこと言うなよ、律!」

澪 「その、なんだ・・・ 夜風に当たって休んでるのかもしれないだろ。その・・・唯は、さ」

律 「・・・・そうだな! じゃ、呼びにいってみるか!みんなはお茶の準備をしといてくれー」

和 「あ、待って。私も行くわ」

律 「おー、いこいこー!」


70 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:42:00.45 ID:VqJUrEcl0
とことこ・・・・


律 「和はどう思う?唯のコーラス」

和 「私は正直、まだ時期尚早だと思う。失敗したらと考えると、せっかく明るさを取り戻しかけた唯がまたふさぎ込んじゃうんじゃないかって」

和 「・・・それがとても心配」

律 「そっかぁー」

和 「でもね・・・ それは杞憂なのよね。きっと上手くいくだろうし、それにもし失敗しても・・・」

和 「居場所を見つけた唯なら、落ち込んでも立ち直れる・・・・ ううん」

和 「落ち込む暇すら与えてもらえないのかもね」

律 「おう♪」

和 「だから、唯が望むのなら私は賛成」



71 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:44:30.55 ID:VqJUrEcl0
律 「やっぱトイレにいなかったな。じゃ、澪が言うように、外で風に当たってるのかもな。行ってみようぜ」

和 「ええ」

和 「・・・・ねぇ、律。あなた唯のことに気づいて・・・」

律 「私さ」

和 「・・・・・」

律 「唯みたいなやつって、なんだか放っておけないんだよな。昔の澪を見てるみたいで」

和 「澪?」

律 「そう、澪。今でもあいつ、かなりの恥ずかしがりだけど、昔はそれに輪をかけた照れ屋さんでさ」

律 「ていうか、もう対人恐怖症に片足突っ込んじゃってるってくらい、人と接するのにオドオドしてたのね」

律 「そうなったのには何かきっかけがあったんだと思う。それが何かは澪も言おうとしないし、敢えて私も聞かなかったけどさ」



72 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:46:06.48 ID:VqJUrEcl0
律 「まあとにかく。澪は自分で自分の心に蓋をしてしまって。その蓋を開ける鍵は外側にしか付いていなかったんだ」

和 「・・・・・・」

律 「だから誰かがそれを外してやらなきゃならない。蓋を開け外の光を入れてやって、見ろよ、外の景色も悪いもんじゃないだろって」

律 「んでさ。私は昔からこんな感じのやつだったからさー。ガサツで頭が悪くて単純で・・・」

律 「でも、単純だからこそかな。見えるんだよ。あ、こいつはもう一人じゃどうにもできなくなってるんだなってのが・・・わかっちゃうんだ」

和 「考えるんじゃない。感じるんだ・・・って?」

律 「そうそう、それそれ。だからお節介といわれてもうるさがられても、放っておけない。あの頃の澪と一緒なんだ、唯は」

律 「てことくらいかな、私がわかったのは。もちろん唯に何があったか、なんて分かるはずもないし、知る必要もないしなー」

律 「まぁ、本音を言えばウジウジしてるやつを見るとイライラしちゃうから、もう言いたいことははっきり言えよ!って、言ってやりたいだけなんだけどな!」

和 「律・・・・」



73 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:49:00.51 ID:VqJUrEcl0
和 「律は澪の心に光を灯すことに成功したってわけね」

律 「そんな大したことじゃないよ。けっきょく澪しだいだったからな。本人が変わりたいと思ってくれなきゃ、どうにもならないし」

和 「それでもすごいわ。そして、今回も。唯のことも・・・」

和 「私にはできなかったこと・・・」

律 「おい、和?」

和 「正直に言うとね、律。私はあなたに嫉妬しているの」

律 「はぁ・・・?」

和 「唯は律と出会って、笑顔を取り戻せたの。強引なところに戸惑いながらも、律の明るさに引き込まれるように、唯も笑っていることが多くなった」

和 「あなたのおかげ」

律 「いや・・・ たしかに唯を笑わそうと色々したけど、別に私だけのおかげってわけじゃ・・・」

和 「ううん、やっぱり律がいたからよ。幼馴染の私には分かるの。きっと唯は律が好きなんだわ」

律 「はぁー・・!?」


74 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:50:40.00 ID:VqJUrEcl0
和 「私は唯に昔の明るさを取り戻してもらいたくて、色々やってきたつもり。そしてここに入部して、やっと唯は笑顔を見せてくれるようになったわ」

和 「でも、その笑顔の先にあるのは律、いつもあなただった。ずっと一緒にいた私ではなく・・・・」

和 「だけど、それは当然なのよ。だって私はいちど唯を裏切った身なんだもの・・・・」

律 「なぁ、和」

和 「なのに私・・・勝手に報われない気になっちゃって・・・見返りなんて求めてるつもりはなかったのに・・・・」

律 「和」

和 「唯の笑顔が見たい。ただそれだけの筈だったのに・・・・」

律 「和!!」

和 「律ぅ・・・」

律 「唯が・・・・見てる・・・・」

和 「えっ」


75 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:54:01.77 ID:VqJUrEcl0
唯 「の、和ちゃん・・・・」

和 「唯!ど・・どど・・・どこら辺から聞いてたの!?」

唯 「えっと・・・田井中さんが私を秋山さんみたいで、放っておけないって言ったくらいから・・・・」

和・律 「ほぼ最初からかい!!」

唯 「だってだって・・・ 出で行きにくい雰囲気だったから、その・・・」

唯 「ごめんなさい・・・・」

和 「う、ううん・・・ 私こそ変なこと言って、聞かせちゃって・・・ ごめんね・・・」

唯 「・・・・・ううん」

和 「・・・・・・・・」

律 「・・・・さて、唯も見つかったし、私は戻るかなっと」

律 「あ、和」

和 「え、なに・・・」

律 「なんか顔が赤いぞ?暑くてのぼせちゃったんじゃないか?みんなには言っとくから、すこし外で涼んでから戻って来いよ」

和 「そんなこと、私は別になんとm
律 「あ、それと唯」

律 「ちょっと心配だからさ。和に付いてやっててくれ。お前が一緒にいれば安心だ」

唯 「うん」

律 「じゃ、あとよろしくー」とてちて・・・

唯 「行っちゃったね」

和 「いい人だね」

唯 「うん」


76 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:56:45.88 ID:VqJUrEcl0
和 「せっかくだから、少し話してからもどろうか」

唯 「うん」

和 「といっても、何から話したら良いのかな・・・ ていうか、すでに色々聞かれちゃってるんだよね」

唯 「・・・・あのね、和ちゃん」

和 「・・・・うん」

唯 「ありがとう」

和 「・・・・・!」

唯 「私ね、和ちゃんが言ってたとおり田井中さん・・・ りっちゃんが好き」

和 「・・・・・う」

唯 「和ちゃんが背中を押してくれなきゃ私、ずっとどこかの隅で小さくなって怯えてるだけで・・・」

唯 「みんなやりっちゃんと出会えなかったと思う。だからね和ちゃん、ありがとう」

和 「なんで・・・なんで”ありがとう”なんて言えるのよ・・・」

唯 「和ちゃん・・・・?」

和 「責めてよ・・・ せめて一言なり、なんでなじってくれないのよ・・・」


77 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/03(木) 23:58:18.02 ID:VqJUrEcl0
唯は小さい頃、よく私をかばってくれたよね。

なのに私は唯が辛い思いをしている時、見当はずれな助言をしてしまった。

それでよけい苦しい立場に追い込まれた唯を・・・ 助けを求めて差し出されていた唯の手を・・・・

あんな最低な奴らに目を付けられるのが怖くて、掴んであげることができなかった。

そのせいで唯は笑わなくなって、私は良心の呵責に苛まれて・・・

だから、唯の笑顔を取り戻したかった! そうすることが唯のためだって・・・!

だけど・・・ いざ唯が笑顔を取り戻して。けれどその笑顔が自分に向けられたものではなかったから・・・

悔しくて悲しくて・・・・ 律が妬ましくなって・・・・


78 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:00:32.42 ID:RcacNd0p0
和 「だから違うよ!私は唯にお礼を言って貰えることなんか、何もしていないんだ!」

和 「唯がもとの唯に戻ることで、私が犯した過ちも無かったことにしたかっただけなのよ!」

和 「そんなんだから・・・ 律に嫉妬してしまうなんてみっともないこと・・・ 私は自分が情けない・・・」

唯 「和ちゃん・・・」

唯 「あのね、和ちゃん。正直言うとね、和ちゃんのことちょっと嫌いになってたんだ・・・」

和 「・・・・!」

唯 「私バカだけど、いま和ちゃんが言ったことくらい分かってたよ。だからね・・・・」

唯 「今さらって。調子良いよって。ずっとね、少しだけ思ってたの。だからね、ほんのちょっとだけ・・・」

唯 「和ちゃんのこと、嫌いになってた」




79 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:02:38.62 ID:RcacNd0p0
和 「ゆ・・・い・・・」

唯 「あんなにやりたがってた生徒会をあきらめた時も、だから私は何も言わなかったの」

唯 「私、嫌なやつだよね。私のためにやりたかったこともできなくなって、ちょっといい気味だって・・・・」

和 「・・・・・」

唯 「でもね、和ちゃんはそれくらい私のことを考えてくれてたんだよね。だからね、心の別のところでは嬉しいとも思ってたんだ」

唯 「だって昔の友達で、私がこうなっちゃってからも変わらず側にいてくれたの、和ちゃんだけだったんだもん」

和 「ユイィ・・・・」

唯 「今は感謝してるよ。私を見捨てないでくれて。ここに引っ張ってきてくれて。さっきのありがとうは、だからこの事の”ありがとう”」

和 「唯・・・・ 唯・・・・」

唯 「それとね、ごめんね。生徒会のことも、嫌っちゃったことも」

和 「唯~~~~・・・・」

唯 「泣かないで。まるで私みたいだよ?」

和 「なに言ってるのよ、バカ・・・」

唯 「えへへ・・・ 和ちゃん、今は昔と同じ」

唯 「大好きだよ」

和 「泣かせるようなこと言っておいて、泣かないでなんて。勝手なこと言わないでよーー・・・」

外に出て開放的な気分になって、新しい一歩を踏み出す。

唯のためになればと、そう考えて賛成した合宿だった。

でも・・・・内に篭って考えが凝り固まっていたのは、唯だけではなかった。

私もそうだった。それを自覚することができた。


81 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:05:07.47 ID:RcacNd0p0
だから、踏みとどまっていた4本の足を互いの手で引き合いながら。

一人じゃなく、二人で。お互いの止まっていた時間を取り戻すために。

今、踏み出すんだ。

和 「唯、お願いがあるんだけど」

唯 「なぁに?」

和 「ぎゅってして?昔、私が泣いていたら、いつもしてくれたみたいに」

唯 「えへへ・・・ 和ちゃんのあまえんぼ」ぎゅっ

和 「うん、そうだよ。ずっと昔から・・・」

唯の暖かな抱擁。それと同じくらい温かな唯の心が肌を通して、私の中に入り込んでくるようで。

ハッキリと分かった。唯には今までの立ち居地の「和」は、もう必要ないんだ。そして私にも、今までの「唯」は、もう要らない。

この共依存の日々が、終わる時が来たんだ。

この日を契機に私たちはかつての。そう、あの忌まわしい出来事が起こる以前の。

本当に意味での親友に戻ることができた。




82 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:06:31.50 ID:RcacNd0p0
そして。夏休みが終わり・・・

桜高祭でのライブは、自分達でも驚くほどの盛況ぶりだった。

学祭直前に顧問になってくれた山中先生(あんな人だったなんて・・・)作の華やかな衣装は観客の目を惹き。

練習の甲斐もあって演奏のスキルは急上昇。

私の歌声に寄り添うように重なる唯のコーラス。我ながら抜群のコンビネーションだったと思う。

最後の最後で飛び出した澪の恥ずかしいサプライズもあって、更に会場の熱気はオーバーヒート。

これ以上ないってくらいの満足感を私たちの胸に残し(澪には他の思いも残っちゃっただろうけど)、ステージの幕は閉じられた。

そして・・・・



83 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:07:40.72 ID:RcacNd0p0
やがて季節は移り変わり・・・

盛夏を過ぎるととたんに肌寒くなって、季節は秋。

並木が紅葉する様を楽しみながら、軽音部のみんなと登下校した通学路。

やがて紅葉が色あせて舞い落ち、路上に薄茶色の絨毯を敷きつめ始めると、マフラーに顔を埋めて小さくなりながら歩く子たちの姿が目立ち始める。

あっという間に冬の到来だ。

クリスマス。年越し。お正月。冬は楽しいイベントで盛りだくさん。

みんなで集まってはしゃいで、心の底から笑いあって。

そして気がついたら季節は一巡して春。

私たちが高校生になって・・・ 軽音部のみんなと出会って一年が経った。

私は二年生になって。

そして・・・・

私は軽音部を退部した。



84 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:09:00.84 ID:RcacNd0p0
駅前の喫茶店!!


和 「お待たせ、憂」

憂 「こんにちわ、和さん」

和 「なぁに、憂。急にさん付けなんて、他人行儀な呼び方をしちゃって」

憂 「えへへ。だって私も桜校生になって、和ちゃんは先輩だもん。きちんとけじめはつけなきゃって思って」

和 「へぇ?その割には今、ちゃん付けで呼んでたけどね?」

憂 「はっ!いけない・・・ ついいっつもの癖で」

和 「ふふ。まぁ、二人の時はいいじゃない。私も憂からさん付けで呼ばれるの、なんだかくすぐったいって言うか落ち着かないもの」

憂 「そうだよね。じゃ改めて。こんにちわ、和ちゃん」

和 「こんにちわ、憂」



85 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:10:35.83 ID:RcacNd0p0
憂 「和ちゃん、軽音部やめちゃったんだね。どうして?」

憂 「その・・・ 楽しくなかったの?」

和 「ううん、とっても楽しかったわよ。居心地が良くて暖かくて」

憂 「じゃあ、どうして?」

和 「やりたいことがあるの。だからね、彼女たちとは今までと違った形で、今まで以上の付き合いをしていくつもり」

和 「それにね。唯も私も・・・ もうお互いがベッタリじゃなくってもやっていけるんだって。その事に気づいたから」

憂 「・・・・・」

和 「あ、それで。今日はどうしたの?何か用事?」

憂 「うん、和ちゃんに見てもらいたいものがあって」


86 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:14:23.80 ID:RcacNd0p0
憂 「はいこれ。形になったら一番に和ちゃんに見せるって、約束だったから」

和 「これ・・・完成したんだ。ありがとう。さっそく見せてもらって良い?」

憂 「恥ずかしいけど・・・ うん。感想、聞かせてね」

和 「もちろん。どれどれ・・・ あら、これって・・・・」

憂 「どうかな・・・・」

和 「よく描けてるわ。みんなも特徴を捉えて可愛く描けてる。それに・・・この雰囲気・・・・」

和 「私たちの軽音部に満ちてる雰囲気そのものね」

憂 「えへへ・・・ クリスマスや年越しに皆さんが家に来てくれたから、イメージしやすかったんだ」

和 「あと・・・ マンガの中の唯・・・ とっても楽しそう」

憂 「うん。今まで辛い想いをした分も、これから楽しい高校生活をおくれますようにって。その願いも込めて」

和 「きっと・・・ううん。絶対そうなるわよ」




87 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:15:18.77 ID:RcacNd0p0
和 「それにしても・・・うふふ」

憂 「なぁに?」

和 「このペンネーム。変なの」

憂 「だって、本名は恥ずかしいんだもん。だけど、かっこいいペンネームって難しいね。ぜんぜん思いつかなくって」


憂ことPN「かきふらい」作のこのマンガ。作者の姉と周りの人々をモデル(もちろんフェイクあり)に描かれた「けいおん!」。

やがてこの作品は雑誌編集者の目に留まり、連載・アニメ化と順調に人気をはくし、一大ムーブメントを巻き起こすことになるのであるが・・・・

それはまた別のお話である。


和 「憂、カキフライ好きだったっけ?」

憂 「むしろ苦手・・・」

和 「好き嫌いはダメよ。自分のペンネームに恥じないよう、きちんと食べられるようになりなさい」

憂 「はい、努力します・・・」


88 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:18:39.52 ID:RcacNd0p0
軽音部には可愛い後輩が入部したそう。きっとますます、賑やかで楽しい部になっていくんだろうな。

居場所とかつての明るさを取り戻した唯。次は律へ気持ちを伝える大仕事が待っているね。

鋭い律もそっちの方面には疎そうだし、苦労する唯が目に浮かぶよう。

でも、今の唯だったら気持ちをきちんと言葉にして、相手に伝えることができるよね。だから、ひとまず心配はしないことにしておくわ。

憂も夢への第一歩を原稿という形になした。

皆が日々、新しい一歩を踏み出している。

じゃあ、私は?

私は今期の生徒会選挙に立候補するため、その準備に追われる日々を送っている。

ずっとやってみたかった仕事。実現のためには、やることは山盛り。演説文、ポスター作りにクラス巡り・・・てんやわんや。

だけど必ず実現してみせる。私には私の新しい居場所を作る、夢を叶えるという義務と権利があるのだから。



89 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:21:24.38 ID:RcacNd0p0


律 「みなさん、こんにちわー!今日は私たち軽音部のライブにようこそー!じゃあ、メンバーを紹介します!」

律 「ギター!休みの日はいつもゴロゴロ。甘い物なら私に任せろ!ノンビリ妖精 平沢唯ぃー!」

唯 「じゃらーん!じゃららららら、ぎゅいーーん!」

律 「キーボード!お菓子の目利きはお手の物。シットリノリノリ天然系お嬢様 琴吹紬ぃー!」

紬 「ぽろぽろぽろ、ぽろろろろろろん。えへ♪」

律 「ベース!怖い話と痛い話が超苦手!軽音部のドン、デンジャラスクイーン!秋山澪ぉー!」

澪 「誰がデンジャラスだ!!」

律 「ドラム!!容姿端麗頭脳明晰!さわやか笑顔で幸せはこぶみんなのアイドル!田井中りt(ごんっ!)いたぁー!?」

澪 「自分だけ持ち上げすぎだろ!!」

律 「最後にボーカル、バンドの花形の登場だ!全てを見通す赤ブチメガネ。しっかり者の軽音部のお母さん!真鍋和ぁー!」

和 「お・・・お母さん。そう見られてたのね、私・・・ 正直へこむわ・・・・」



90 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:23:04.72 ID:RcacNd0p0
律 「てな感じのMCでいってみようと思うんだけど、どーよ」

唯 「私はいいと思うよ、りっちゃん!!」

澪 「えー・・・ もうちょっとまじめにやろうよ・・・コミックバンドと間違われちゃうだろ」

唯 「澪ちゃん、面白いしこれで行こうよー。それにもうすぐ幕が開いちゃうよ、ねぇムギちゃん?」

紬 「あらあら、そうねぇ。今から考え直している時間はないわねぇー」

澪 「うう・・・」

和 「せ、せめてお母さんってのだけは抜いてくれないかしら・・・・」

律 「分かった分かった。さ、時間だ。みんな配置につこうぜ。良いライブにしような!」

おーっ!



91 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:25:46.48 ID:RcacNd0p0
静かにゆっくりと、目の前を覆っていた幕が上がってゆく。

替わりに現われたのは、これから始まるライブに期待の目を向ける顔・顔・顔・・・

体が震える。武者震い。心地好い緊張感が全身を支配する。悪い気はしない。

マイクスタンドに手を沿えながら、震えで膝が笑わないように両足に力を込める。

律のワンツーの掛け声と共に始まる演奏。いよいよだ。

私も皆の演奏に負けないように、懸命に歌う。隣では唯も私を追うように声を重ねてくる。

最高の演奏。最高のコーラス。だから私も最高の歌で応えなきゃ。

緊張は興奮に代わり、ただ純粋に今の瞬間を楽しんでいる自分がそこにはいた。



この思い出があれば、きっとこの先。失敗したり後悔を感じることがあっても。

きっと私は膝を折ることなく、挫折を知ることもないだろう。

後ろに気を取られていた私に前を向かせてくれた、かけがえのないみんなとの思い出があれば。

私の軽音部でのライブは終わったけれど、新しいステージの幕はまだ開いたばかりだ。


おわり!


92 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/02/04(金) 00:26:58.93 ID:RcacNd0p0
淡々と投下して淡々と終了。

お目汚し、失礼致しました。


96 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします sage 2011/02/04(金) 00:44:17.63 ID:F0D29KhZo
乙!
最初は唯や律の性格改変に戸惑ったけど、読み進んでいく内に
改変にもきちんと納得がいったよ。
良SSをありがとう。


97 2011/02/04(金) 01:59:31.86 ID:RcacNd0p0
乙どうもです。
また機会があったらよろしく。
ちなみに、読んでくれたら分かったと思うけど、俺は純派です。

ではまた。


99 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします sage 2011/02/04(金) 07:46:13.60 ID:CtwONhyEo
可愛い後輩は実は純ちゃんだったとか…?
閉じた心の鍵を仲間が開けてくれる描写は素敵だ///
とても面白かったです、>>1さんお疲れ様でした!


102 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします sage 2011/02/08(火) 03:19:49.47 ID:/Brzbeybo
乙。正直ちょっと感動した

俺もかきふらい云々は微妙かなと感じた。別に悪いという程の事もないけど
でも、>>1はキャラクターを良く理解した上で書いているように思えた
それに、何よりしっかりとした物語が動いているSSだった
しかも解りやすい形をとっていて、押さえるべきポイントが簡潔にまとめられていて凄い


なんか批評めいちゃってスマン。俺キメェなwwww
ところで、>>1が純派だとわかる部分ってどこ?




スポンサーサイト

テーマ:けいおん! - ジャンル:アニメ・コミック

コメント
コメント
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック
copyright © 2018 Powered By FC2ブログ allrights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。